入院先で車いすに横たわったまま博士号を授与される鳥居喜代和さん。妻の美門さん(左)、水島朝穂・早大教授(左から2人目)らが見守った=24日、札幌市清田区
ドイツ・ワイマール憲法や生存権の研究で知られ、今は脳障害で寝たきりの状態が続いている憲法学者の鳥居喜代和(きよかず)・札幌学院大元教授(58)に24日、母校の立命館大学から特別博士号が授与された。
鳥居さんは12年前、過労による脳出血から倒れ、一時回復したが3年前に再度発症して寝たきりに。倒れる前に自分の論文をファイルにまとめており、かつて札幌学院大で研究生活をともにした水島朝穂・早稲田大教授(57)らが「憲法的価値の創造 生存権を中心として」の題で本にまとめ、日本評論社から出版した。立命館大は、本人が病気などで明確な意思を示せなくても、関係者の要望で業績を評価できるよう規定を整備し、「大学をあげて思いに応えた」という。
この日は、立命館大の倉田玲(あきら)・前副法学部長が札幌市内の入院先を訪ね、鳥居さんに博士称号記を手渡した。「よかったわね」と妻の美門(みかど)さん(59)が耳元で語りかけると、鳥居さんは目を見開いた。水島教授も同席し「今こそ生存権の理論が求められているんだ」と声をかけた。
26年前、「地域に根ざした法学部を創(つく)る」との理念のもとに全国各地から札幌学院大に研究者が集まり、その中に鳥居さんと水島教授もいた。水島教授は、ワイマール憲法で普及した社会権・生存権を深く分析した鳥居さんを高く評価。入院後も鳥居さんを何度も見舞った。鳥居さんは全身マヒと意識障害に苦しみながらも、語りかけると顔を紅潮させたり、目を見開いたりする。水島教授は、鳥居さんに何度も語りかけながら論文集の編集を進め、学位申請を立命館大とかけあった。(本田雅和)