沖縄特措法「改正」と“法恥国家” 1997/3/31


った法律を改正する法律くらい誤ったものはない」(パスカル『パンセ』)。

フランスの有名な数学者・哲学者の言葉は、いま実にリアルに響く。沖縄の米軍用地特別措置法「改正」問題である。動機も不純、手続も強引、発想も傲慢。「法治国家」といわれる日本で、衆人環視のもと、白昼起きている出来事なのだ。
  そもそも、沖縄は何度もこの国の中央政府から捨てられてきた。「琉球処分」(1879年) 、そして対日講和条約3条。沖縄をアメリカの施政権下に置くことを認めた条項である。一貫してこの国は、沖縄に対して「放置国家」であり続けた。米軍による土地強奪を固定化する法律で、それ自体違憲の疑いが濃厚なものを、日米首脳会談前に強引に成立させて、クリントンへのお土産にしようという。信じられない傲慢さだ。
  3月27日付「沖縄タイムス」に特措法改正案全文が載った。法律の正式名称は96文字もある。ここに書くのも嫌になるほど長い。収用委員会が審理中の土地については、裁決までの間暫定使用できる(15条)。さらに、収用委が裁決を却下した場合でも、首相は再審理を命ずることができる。そもそも強制使用手続の使用認定を出すのも首相だから、収用委は強制使用を認める裁決以外の選択肢がなくなる。収用委の存在がピエロになる。これでは、ゲームの途中で自分が勝てるようにルールを変更し、審判員に「黙って見ていろ」と言うようなものだ。人はこれを恥知らずという。結論、先にありき。「法律的不法」(G・ラートブルフ)そのものである。この国はついに「法恥国家」になったのだろうか。