自・自連立にあたり、PKF本体業務の凍結解除が合意された。この点に関して、『朝日新聞』(東京本社)1月9日付に私の談話が載った。紙面の都合で予定したものが全部掲載されなかったので、ここで紹介しておきたい(なお、8日のテレビ朝日「ニュース・ステーション」でも同趣旨のことを話した)。 「凍結されていた国連平和維持隊(PKF)業務への参加を解除しようとする動きは、国連側の要請もないのに、突然に現れた。自由党の小沢一郎党首は、湾岸戦争以来、国連の旗のもとでの武力行使は憲法上可能と主張してきた。小沢氏の敷いた伏線はガイドライン関連法案から、さらに踏み込んで、武力行使を前提とする米国中心型の多国籍軍に自衛権を参加させる道を開くものと言っていいと思う。昨年六月、国連平和維持活動(PKO)での武器使用基準が見直され、『上官の命令』で発砲できるようになった。また、周辺事態関連法案には、経済制裁の際の船舶検査(臨検)の実施が盛り込まれている。今回の合意は、こうした動きの延長にあり、自衛隊が領域外で武力行使する可能性を開くものだ。行き着くところは、米海軍による海上封鎖への海上自衛隊の参加なのではないか。日本国憲法は、武力による威嚇・行使を否定している。威嚇を背景に外交をするような国は、例え憲法を改正しなくても、もはや平和国家とみなされないだろう。国民はそんな選択を認めていないはずだ。自民党はこの問題を連立のカードにはせず、いったん棚上げにして選挙で国民の判断を仰ぐべきではないか」。 突然の電話取材でしゃべったものだから、舌足らずな部分を残している。若干補足しておく。まず、上官命令による武器使用(PKO法24条改正)についてはすでに述べた。PKF本体業務の凍結とは、PKO法3条3項のイからヘまでの業務に、巡回や武器の搬入・搬出の検査といった歩兵部隊が行う業務が含まれているので、別に法律で定める日まで実施しないということを指す(同法附則2条)。今回の連立合意はその実施法を制定するということを含意しているのだが、むしろ真の狙いは3条3項ハの武器検査などが実施できるのだから、「船舶検査」(臨検)も当然という雰囲気を作るところにあるのではないか。いずれも、「国連の旗」のもとでの活動だから憲法9条に違反しないとする小沢流の強引な論理が貫けるわけだ。小沢氏が自・自連立にあたり、「船舶検査」を周辺事態法案から切り離し、単独の立法にすべきだと主張している点も要注意だ。「後方地域支援」など、周辺事態法案には「後方」という言葉が多様されている。第7艦隊が北朝鮮シフトを敷いて日本海に展開したとき、海自の護衛艦は、海上阻止行動への参加を求められるだろう。そのとき、「後方か否か」などとはいっておられないから、単独立法にして、国連安保理決議さえあれば動けるような柔軟性を確保しておく。そこに小沢氏(そして背後にいるアメリカ)の狙いがある。小沢流の「普通の国」論がまた表に出てきた。これは日本国憲法の想定する平和的な国家のあり方とは明らかに異なる。山内敏弘編『日米新ガイドラインと周辺事態法』(法律文化社、近刊)に、対案的な論文を書いておいたので参照されたい。 |