雑談(77)「食」のはなし(16)ワイン「葡萄交響曲作品201」 2010年1月25日

年最初の「雑談」シリーズは「『食』の話」から。前回はチャーハンについてだったが、今回はワインの話である。

私はアルコールを一切飲まない。正確に言えば、アルコール分解酵素が極端に少ない遺伝体質のようである。だが、ゼミや研究室のコンパをはじめ、必要な酒席には出ることにしている。私がボトルを入れて、自分はソフトドリンクを飲むということもある。大学周辺には馴染みの店が数軒あり、女将は、連れていった客に酒の注文を聞き、私には「先生はこれですね」とウーロン茶を持ってくる。そんな私が、ワインについて書くという。これはどういうことなのか。本を読まないで書評を執筆したり、映画を観ないで映画評を書いたりするようなものだろう。だから、ここでワインの味や香りについて語ることはできないし、そのつもりもない。たまたま出会ったワインの周辺事情が大変興味深かったので、それについて書くことにしたい。

昨年の12月27日、私が会長をしている早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団(WPO)の第61回定期演奏会が、墨田トリフォニーホールで行われた。創立30周年記念公演として、メンバーは大いにはりきって演奏してくれた。メインのサン・サーンス作曲、交響曲第3番ハ短調は、パイプオルガンの重厚な音色とオケが絡み合う壮麗な曲で、1150人の聴衆を楽しませてくれた。終了後、歌舞伎町の居酒屋に全メンバーが集まり、打ち上げをやった。最初の乾杯に使うため、私が差し入れたのが「葡萄交響曲作品201」である。

12月19日、長野県原村の蓼科自由農園に立ち寄った際、そこで偶然見つけた。ラベルを見ると、「誕生から貯蔵・熟成に至るまで独自のプログラムによりクラシック音楽を聴かせて育てました」とある。「これは面白い。演奏会後の打ち上げにはぴったりだ」と思い、1ケースを配送手続した。

打ち上げの乾杯の際、このワインがどのように作られたかを紹介した。実際、クラシック音楽がワインの味にどう反映したのかは、私自身は飲まなかったのでわからない。しかし、赤と白の両方を飲んだメンバーによると、とても口当たりがよくて、美味しかったということだ。特に赤ワインが好評だった。

私は、定期演奏会の数日前に、諏訪の原酒店を介して、信濃ワインにメールで問い合わせた。以下は、私の質問とそれに対する信濃ワイン株式会社の回答である。当日、この情報を紹介しながら、乾杯の挨拶を行った。

私がメールで送った質問は、次の3点である。

信濃ワイン株式会社からの回答は、下記の通りである。

ベートーベン 交響曲第6番へ長調作品68「田園」
ブルックナー 交響曲第4番変ホ長調
チヤイコフスキー 交響曲第5番ホ短調作品64
ドボルザーク 交響曲第9番ホ短調作品95
ブラームス 交響曲第1番ハ短調作品68
マーラー 交響曲第1番二長調
シベリウス 交響曲第2番二長調作品43

ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調第2楽章
モーツァルト ヴァイオリンと管弦楽のためのアダージョ ホ長調
バッハ G線上のアリア
バッハ アダージヨ各種
バッハ トッカータとフーガ
パッヘルベル カノン
タレガ アルハンブラ宮殿の思い出
マスネ 歌劇「タイース」から瞑想曲
ドップラー ハンガリー田園幻想曲
スペイン民謡 愛のロマンス(禁じられた遊び)
サラサーテ ツィゴイネルワイゼン
サン・サーンス 組曲「動物の謝肉祭」より白鳥 etc.

さて、2009年末の定期演奏会から2週間弱という日程で「早稲田大学ニューイヤー・コンサート2010」が控えていた。その時点で、このワインを飲んでもらった。その効果のほどはわからない。とにかく、「ニューイヤー・コンサート」に向けて、「気」を高めてほしいという思いからだった。

幸い、1月9日、大隈講堂での早稲田大学初の「ニューイヤー・コンサート」は無事に終わった。早稲田大学総長の挨拶で始まり、ワルツやポルカが9曲、ソプラノソロやフルート協奏曲(モーツァルト)も織りまぜて、アンコールは「お約束」の「美しき青きドナウ」(ヨハン・シュトラウス二世)。続けてラストはラデツキー行進曲(ヨハン・シュトラウス一世)と、通常は聴衆の手拍子を伴うこの曲で終わるのだが、今回は、学生歌「早稲田の栄光」(芥川也寸志作曲)の全員合唱となった。

最後に、ワイン作りの現場から情報をお寄せいただいた、信濃ワイン関係者の皆さまにお礼申し上げます。


付記: 冒頭の写真は、ニュー・イヤーコンサート終了後の大隈講堂。大型楽器搬送用のトラックも見える。

 

トップページへ。