ドイツの日刊新聞(die tageszeitung http://www.taz.de/) 1月29日付に、重油流出事故のレポートが掲載された。特派員が現地に赴き、漁民やボランティアに直接取材した生々しい内容だ。「2年前は神戸の地震で観光客が来なかった。1年前は、原発もんじゅの事故への不安が観光客を遠ざけた。そして今、重油被害だ」。
レポートは、政府の無策を乗り越えて活動する住民やボランティアの姿を伝えながら、福井の旅館に働く人の次の言葉で結ばれる。「汚染された沿岸にある15の原発に張られたオイルフェンスが、流出重油を原子炉の冷却水から分離するのに十分でないことを望みます。原子炉がその運転を抑制せねばならなくなり、大阪や東京で照明が消えれば、日本の他の地域も重油被害を認識するでしょうね」。「緑の党」に近い新聞だけに、重油被害と原発との関係を鋭く突く。太平洋側の鹿島などには、重油事故に備えた最新装備が備蓄されている。その一部が原発正面に送られた。石油連盟と電力会社との連携は素早い。堰式油回収機をはじめ、最新の油濁防除資機材 (http://www.joho-yamaguchi.or.jp/kaneyasu/oil.html)も開発されている。こうした技術や能力が、なぜ沿岸地域の環境や漁民・住民の生活を守るために総合的に活用できないのか。「裏日本」への政府の姿勢は冷たい。危機は、この国の構造そのものの中にある。