隠蔽と嘘は核施設の体質 1997/3/24
南ドイツの古都レーゲンスブルク。その近郊にシュバンドルフという町がある。ここに80年代半ば、各地の原発から集めた使用済核燃料を処理する「核再処理施設」(WAA)が建設されることになった。住民は粘り強い反対運動を展開。行政裁判所への提訴などの法的手段も駆使して抵抗した(判決・決定は1000件)。その結果、89年に建設計画は途中で中止となり、33億マルクが無駄になった。88年
5月、この町のギートルさんというおばあさんの家に滞在して、WAAの問題性について取材した(『ベルリン・ヒロシマ通り』参照)。チェルノブイリ事故から
2年目ということもあり、住民の不安の大きかった。計画当初から会社と州当局の説明は嘘と事実隠しの連続。住民の抵抗が強まると、今度は警察力を動員して抑えにかかった。私自身、周囲をちょっと散歩しただけで、森の中から突然あらわれた機動隊に包囲された。嘘と力の政策。「核施設は究極の警察・監視国家を要求する」。ところで、東海村の動燃施設での事故から
2週間。橋本首相ですら、隠蔽と嘘を重ねる動燃に対して、「どういう体質の会社か」と不信を露にしたという(東京新聞97年 3月15日付)。嘘と事実隠しは、あれこれの職員の悪意やミスなどではなく、実は核施設に固有の体質・気質のようなものといえる。この点はドイツのWAAの問題を取材した実感である。世界が原発からの離脱の方向を模索しているとき、この国だけは、増設の方向に歯止めがかからない。
2度あることは 3度ある。そして 3度目の「不正直」が破滅的な結末とならないように、国民レヴェルでの根本的な議論が求められている。