物見遊山を利用する人々 1997/10/6
立花隆氏が『週刊現代』の連載を打ち切った。過労で体調を崩されたそうで、「人生の突然の中断を選ぶか、連載の突然の中断を選ぶかといわれたら、後者を選ぶほかない」という(同誌10月
4日号)。氏ほどの極限状態ではないが、私も定期検診で各所に異常が出てしまった。札幌と広島の一二年間は、健康的にはパーフェクトだった。東京での生活を始めてちょうど一年半。寿命を縮める覚悟で東京に来た以上、当然の結果だが、心してかからねばと思う。体をいたわるため、先の週末を西伊豆の温泉で過ごした。だが、静養先にも電話は追いかけてきた。某全国紙の社会部記者だった。「明日、第7艦隊旗艦ブルーリッジが東京港に入る。米軍艦船が入港するたびに、大勢の見物客が集まる現象をどう見るべきか。会って伺いたい」。私は事情を話して、取材をお断りした。現在、仕事に復帰しているので、ここでコメントしておきたい思う。空母インディペンデンス(9月
5日、小樽)、空母コンステレーション(9日、佐世保) 、強襲揚陸艦ベローウッド(22 日、鹿児島)、旗艦ブルーリッジ(28 日、東京) 。米艦艇の初寄航が相次いだ。いずれも艦内の一般公開では見物客が大勢押し寄せた。珍しいもの、話題のものには人が集まる。特に「初めて」のものには弱い。人間の好奇心、物見遊山に戸は立てられない。問題は、いま、なぜ、かくも高い頻度で入港してくるか、である。『琉球新報』
9月28日付社説「軍艦の物見遊山でいいか」(http://www.ryukyushimpo.co.jp/shasetu)は、これを米軍の心理作戦と捉え、新ガイドラインの「民間港湾の使用」と関連した「対日戦略」と見る。そして、「イベント面でも『本土の沖縄化』が着々と進行している」と指摘する。9
月上旬、ゼミ学生を連れて岩国基地に行ったが、私たちの少し前に正面ゲート前で写真撮影をしようとした市民グループのメンバーら 3人が、刑事特別法 2条違反(施設・区域を侵す罪)で憲兵隊に身柄拘束された(『中国新聞』9
月11日付)。米軍は決してオープンになったわけではない。このタイミングで頻繁に行われる米艦寄航と艦内公開イベントは、港湾を管理する全国の自治体への無言の圧力となる(「次はお前だ!」)。米軍は全国の港湾の状況をつぶさに調査しており、売春から麻薬までの「夜のガイドライン」(
『週刊宝石』10月16日号の比喩) もあるという。そうした米軍の手法を体感してきた『琉球新報』の指摘は重い。