海上ヘリ基地建設の愚行 1997/11/10
今年3回目の沖縄取材から戻った。読谷村長に会う用事のほか、名護市の「海上ヘリポート」建設問題の現場を取材してきた。12月21日の「市民投票」に向けて、賛成・反対両派の事務所が設けられ、市内各所に看板が目立つ。賛成派の看板には、「ヘリポート移設は街づくりのチャンスです」「子や孫に職場を確保し豊かな生活を推進しよう」とある。キャンプ・シュワーブに隣接する辺野古の海岸に出る。コバルトブルーの美しい海。この沖合に全長1500メートル、幅600
メートルの巨大な「海上ヘリポート」が建設される。ヘリ60機のほか、垂直離着陸機V22 オスプレイも配備予定。沖縄の海兵隊はどこへでも緊急展開する殴り込み部隊である。その70%が北部に集中することになる。これは、冷戦後に新たにつくられる世界一の巨大軍事基地といえる。「ヘリポート」という呼び名は誤解を生む。地元紙『沖縄タイムス』は社内討議を経て、
5日付夕刊から「海上ヘリ基地」ないし「海上基地」と言い換えている。『琉球新報』は、「ヘリポート」を「言葉の詐術」として、端的に「海上基地施設」と呼ぶ(11月8日付社説)。この基地の新設により、騒音被害や海の環境汚染が激化するのは目に見えている。さらに、90ヘクタールの海が太陽の光を失い、サンゴは死滅する。生態系に悪影響を及ぼすことは必至だ。政府は地元の「理解」を得るため、NTTの電話番号案内センターや国立高専の新設といった「振興策」を提示しているが、いま一つパッとしない。21日に橋本首相が沖縄入りした際、「隠し玉」を提示するかもしれない。日本で一番所得の低い沖縄のなかで、北部はさらに貧しい。名護市のなかでも、過疎地域で移設賛成率が高い。振興策でつる手法は、典型的な利益誘導である。10月に名護市議会は、市民投票条例を改正して、投票の選択肢を「反対」と「賛成」の2択から、「環境対策や経済効果が期待できるので賛成」と「環境対策や経済効果が期待できないので反対」を加えた4択に変えた。2択なら反対が多くなるのは明らかだから、4択にすることで「条件付反対」を増やす。そして利益誘導を強化していく。こういう小賢しい手法は、名護市議の頭だけでできるとは思われない。梶山前官房長官が知恵を付けたといわれている。そういえば、梶山氏も橋本首相も、利益誘導の天才・田中角栄元首相の弟子たちだ。