新元号が「令和」(れいわ)と決まった。中身も決め方も素直に喜べない。40年前に制定された「元号法」が元号は政令で定めるとしたことへの疑問はここではおくとしても、内閣がすべてを決められるため、発表までの「時間」の操作を含めて、安倍政権の見事な政治ショーとなっていた。メディアはEテレやBSを除いて、完全中継状態。NHKは本文で予告した通り、16年越しの定番記者による「安倍総理大臣としては・・・」の「思い」の解説を延々とやっていた。官房長官記者会見や首相談話会見の開始時間まで微妙に遅らせて、スタジオのコメンテーターの女性に「ドキドキしますね」などといわせる技もまた、偶然とは思えない。本文に書いたH.シラー『世論操作』の断片性と速報性の組み合わせが十二分に発揮されていた。
そして、新元号の中身である。「令和」は、律「令」の意味の「行政法」や、法「令」の意味の「命令」(政令・府令・省令)にも解釈できるから、「憲法による統治」(立憲主義)や「法律による行政」(法治主義)よりも、「命令による政治」のイメージが強い。「法の支配」の反対語が「人の支配」であると国会で答弁できなかった安倍晋三首相の命令を重視することが「忖度」されかねない。しかも、「法による平和」ではなく、「令による(武力をともなう)積極的平和」という意味では、まさに安倍流の「積極的平和主義」を象徴するものといえなくもない。新元号の読み解き・解説を首相自らが行うという異例の行動を通じて、「美しい国、日本」の強調と、「働き方改革」「一億総活躍社会」など、国会審議を通じて重大な問題がまだ十分明らかにされていないものを、すべて「新しい時代の改革」と一括りにする効果を狙っている。外国人受け入れに重大な変更を加える改正入管法も本日施行される。古い時代から新しい時代への改革として、憲法改正への決意もにじみ出ていた。若者への呼びかけを重視し、「古い時代のものをともかくリセットしよう」というトーンが、首相談話には一貫している。「昭和憲法」を廃して、「令和憲法」の制定を本気で考えているのだろうか。
なお、大学の同僚の名前と同じだが、本人はきわめて穏和で謙虚で優秀な憲法研究者である。新元号発表のすぐあとに知り合いの記者から電話があり、連絡先を教えてほしいと頼まれたが、即座にことわった。
《1日19時付記》国会売店では、「令和まんじゅう」が今日午後早速売り出されたが、すぐに売り切れ、次回入荷は4月4日ということである。