「食」についての雑談
自民党総裁選が始まり、3年前の2021年総裁選の2倍以上の9人が立候補した。どの局も「メディアジャック」の様相を呈している。裏金問題で国民を欺き、不信と怒りをかっている自民党が、いまある裏金問題への追及をかわし、政治資金一般の問題にすり替えてしまう。まさに「裏金ロンダリング」である。「どの候補の政策がいいですか」なんていう街頭インタビューを連日見せられて、15日間で論点ずらしは完成する。27日には新総裁のもとでの「新生自民党」に生まれ変わる。「メディアの惰性」の罪深さ、ここに極まれり、である。なお、候補者の一人は衆院解散を「できるだけ早期に」行うとして、解散前の国会論戦は不要と主張している(その人物の14年前の特大ブーメラン参照)。一方、米国大統領選挙は、10日の討論会の結果、ハリス有利に展開しているようであるが、「トランプの逆襲」の可能性はまだある。「クルスク侵攻」失敗後のウクライナの状況も、戦局だけでなく、軍需産業の代弁者たるゼレンスキーの政権粛清による「政局」が絡んで実に複雑である。
ドイツで食べたドイツパン
2年あまりの在外研究では、日々の食事に注意してきた。1991年の旧東ベルリンでの一人暮らしの際には、野菜をできるだけとるように心がけた。ボンでの1年半は、妻が食事をつくってくれたので、私は買い物に付き合った。少し歩けば大きなスーパーがあり、選ぶのはもっぱら妻である。おかげで健康的に過ごすことができた。
1999年から2000年にかけてはバート・ゴーデスベルク区のヘルダー通り(Herderstraße) 、2016年の半期はベートーヴェンアレー(Beethovenallee)に住んだので、そのいずれからも一番近い「もよりのパン屋」があった。ベッカライ・マルクマン(Bäckerei
Markmann)である。どこにもある普通のパン屋さんで、外見も目立たない。朝6時30分開店。私は、8時前には隣接しているHaidousという雑貨店で新聞6紙を買って(ちなみに、2016年の時は4紙に減)、帰りにこの店に立ち寄る。3月に研究室を撤収する際、資料の山の間から、そこでもらったメモ帳が出てきた。1枚はがして、ご当地の絵はがきと重ねて撮ったのが、冒頭左の写真である。メモ帳の下方には「納得の品質」(QUALITÄT
DIE ÜBERZEUGT)とある。庶民的なごく普通のパン屋さんである。なお、冒頭右の写真は、そのパン屋が、「ベートーヴェン生誕250周年」(2020年)の時に売り出した記念のパンのようである。たまたま店の名前で検索したら、客のフェイスブックで上記写真がヒットした。
ドイツパンは、ライ麦と小麦の配合割合によって分類される。①ロッゲンブロート(ライ麦90%以上)、②ロッゲンミッシュブロート(ライ麦50%以上90%未満)、③ミッシュブロート(ライ麦50%小麦50%)、④ヴァイツェンミッシュブロート(小麦50%以上90%未満)、⑤ヴァイツェンブロート(小麦90%以上)である(日本パン技術研究所のHPより)。ライ麦比率の一番高いパンを食べる時は、厚さ5ミリくらいに薄く切って食べると聞いたことがある。
地方ごとに特徴的なパンがあって、ドイツパンといっても、その人がどこで、何を食べたかによって大分異なる。私の狭い知見(舌見?)の限りでも、ほんとうにさまざまな種類がある。日本でも、「二八蕎麦」と「十割蕎麦」とか小麦粉との配合割合で呼び名もかわる。好みも各人各様だろう。八ヶ岳南麓に仕事場がある関係から、信州蕎麦はよく食べるが、先日、ある方から出雲蕎麦をクール宅配便で送られ、これもとてもおいしかった。なので、ドイツパンも各人各様の好みによるだろう。
私にとって印象に残るドイツパン2種
たくさんの種類のなかで、個人的に印象に残るドイツパンを2つだけ述べておこう。有名なプレッツェル(Pretzel)は塩味が強く、ビールのつまみに好まれるが、私はアルコールをたしなまないのでここでは省く。私が好んだ一つは「カイザーゼンメル」(Kaisersemmel)である。切り込みを入れて模様をつけ、けしの実を一面にちらして焼き上げる。これが香ばしくて実においしいのである。白と黒があって、私は白が好みだった。白胡麻と黒胡麻のものもある(Sesame Kaiser)。これもうまい。カボチャの種をまぶしたもの(Kürbisbrötchen)は独特の食感である。
もう一つは、日常生活では食べないで、特定の季節にのみ食べるパン、それが「シュトレン」(Stollen)である(日本ではシュトーレン)。クリスマス前に食べる定番の「菓子パン」といえる(「クリスマスシュトレン」(Weihnachtsstollen))。バターたっぷりの生地に、洋酒に漬けたドライフルーツやナッツが練り込まれ、シナモンやカルダモンなどのスパイスをまぶして焼き上げてある。白い細かなシュガーで包まれていて、いかにも甘ったるいように見えるが、さほどでもなく、舌になじむ。あえてこの「ドイツ菓子パン」を挙げたのは、ある方の思い出が絡むからである。
日本で食べるドイツパン
徳島弁護士会での講演の翌日、鳴門の渦潮やドイツ館などを案内していただいた。ドイツ館に隣接する、Deutscher Imbissという軽食処に入って昼食をごちそうになった。鳴門には「ドイツ軒」というパン屋があって、初代店主がドイツ兵捕虜からパン作りを習ったというが、今回は訪ねられなかった。
ネットで「ドイツパン」と検索すると、日本にもドイツにこだわったパン屋さんがたくさんあって、ドイツ語のベッカライ(Bäckerei)を店名に使う店も少なくない。地元で検索したら、「モルゲン ベッカライ」(Morgen Bäckerei)という店が徒歩圏内にあることを知った。Schweizer(スイスパン)ということで、ブロートとブレートヒェンを何種類か買った。久しぶりに本格的なBrotを食べた。
吉祥寺に「ベッカライ・カフェ リンデ」(Bäckerei Kaffee Linde)を見つけた。「ドイツパンの本当の美味しさを、できるだけ忠実に、この日本で再現したい」というコンセプトで1997年に開店したという。妻が一度何個か買ってきたというのだが、私の記憶にない。今度、自覚的にランチに行ってみようかと思う。
もう一軒、長野県松本市に「ブロート・ヒューゲル」(Brot-Hügel)という店があるのを知った。「自家栽培のヒューゲル小麦、生産契約農家で栽培の長野県小麦、ドイツライ麦、乗鞍高原の天然山葡萄を使った自家製酵母など、 小麦本来の風味と素材の味を大切にした、安心で美味しいパン作りをしています」という紹介文が気に入った。この店の場合、ライ麦50%のパンと35%のパンという形で区別して表示しているのが本格的である。来月、八ヶ岳の仕事場に行くので、その際訪れてみようと思う。
とういわけで、今回は、ドイツパンについての個人的な雑談でした。お付き合いいただき、ありがとうございました。