「平和」の重さ、外国で身近に
             〜朝日新聞・東京本社/大阪本社/衛星国際版1999年 8 月7 日付
    平和の意味をドイツで意識
             〜朝日新聞・西部本社1999年 8 月9 日付)
                           水島 菜穂(ドイツ 16歳)



「平和」について、私は日本にいる時は、当たり前のように感じていた。でも、ボンで父母と生活するようになって、初めてこの言葉を意識するようになった。それは、同じアパートに住むカナダ人の学生と友達になったのがきっかけだった。 彼は二十一歳、父がカナダ人、母がジャマイカ人で、生まれはアフリカのモザンビーク。国連の仕事をしている父親と戦乱の国などを回った時、目の前で子供が殺されるのを見た。大きなショックを受け、怒りを感じたという。 この話をする時は、彼はケラケラと笑ういつもの顔とは違って、真剣で何とも言えない表情になる。私はその時、テレビで人が殺されるニュースが流れていても、平気でご飯を食べていた自分に気付いてハッとした。 彼の夢は、プロのサッカーコーチ。その彼が、国連ボランティアの一員として、東チモールの住民投票支援グループに参加したのだ。 彼が出発の朝、近くのお店に一緒に行き、サッカーボールを二個買った。「何でボールを買うの」と聞くと、「行った先々で、みんなにサッカーを教えてあげたいんだ」。それが彼のもう一つの夢だという。 彼の姿を見ながら、いままで関心がなかった「平和」について、真剣に考えている。