わが歴史グッズの話(4) 2002年2月11日

年暮れ、パキスタンにいた友人から小包が届いた。開けてみると、ラクダの親子のぬいぐるみが出てきた。手紙には、イスラマバードのアフガン難民キャンプで買い求めたものとある。思えば一昨年のちょうど今頃、家族でボンからエジプト旅行をして、ギザのピラミッド周辺の砂漠を小一時間ラクダでまわった。ラクダに実際に乗ってみると、馬よりもずっと高いところに座るので眺めはいいが、降りるときはちょっと怖い。ぬいぐるみを見ながら、ラクダの背中のコブの感触を思い出した。

  さて、10.8に始まる「ブッシュの戦争」。どれだけのアフガン民衆が命を落としたか。9.11の犠牲者の数をすでに上回っているとの試算もある。特に米軍が投下したクラスター爆弾は対人地雷と化して、いまも民衆を殺傷している。「今日落として、明日殺す」という卑劣な兵器。国際的に禁止された対人地雷を平気でばらまくブッシュの感覚には驚くばかりだ。 わが歴史グッズのなかには、陸上自衛隊の72式型演習対戦車地雷もある信管もゴムでできている演習用のものだが、かなり重い。私は5年前の直言で「地雷全廃に向けて」を書いた。その後、対人地雷禁止条約(オタワ条約)が発効した。ただ、対戦車地雷は禁止対象になっていないため、自衛隊も多くの地雷を保有している。なお、対人地雷禁止条約は、NGOが各国政府、国連と協力して作り上げたニュー・タイプの条約である。私も編者の一人である『三省堂新六法』の国際法編には、この条約を収録してある。「市民の六法」というコンセプトから、NGO参加型の条約を入れることにしたのだ。今後、この種の条約が増えていくことが注目される。

  さて、カンボジアの地雷問題も深刻である。私が持っている対人地雷は、現地で使われていたソ連製のPOMZ2M型の棒地雷である。棒の部分と火薬を除いた錆びついた本体はずっしり重い。昨年3月に現地で入手したものだ。 米軍の地雷探知機も、カンボジアの地雷標識と並べて研究室に展示してある。電池を入れてヘッドホーンを耳にあてるが、反応はない。地雷除去はもはや軍隊や自衛隊の専売特許ではなくなった。民間の地雷除去技術の発展が注目される。日本IBM も地雷探知の新たな技術を開発しているし、「対人地雷の人道的探知・処理に関するワークショップ」(日本学術会議主催)も行われている。世界各地にある膨大な地雷の除去に向けて、そうした「民間活力」が今後ますます注目されていくだろう。私の研究室にある地雷関係グッズがすべて「歴史資料」となる日はいつになるのだろうか。

トップページへ